GCCAについて
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前回からコラムでご紹介している『社会心理学ショートショート-実験でとく心の謎;岡本浩一著』の本日は第2章「認知的不協和理論」についてですちょっと堅苦しい感じがするかも知れない。しかし、以下のような経験をされたことはありませんか。
某メーカーのパソコンを買った知人が、購入後他社のパソコンの方が使いやすく優れていることを聞かされた。知人は「えー、何で買う前にそれを教えてくれなかったのか」と決定し行動したことへの後悔が生じるが後の祭りである。
心の中で矛盾する2つの認知によって出来たズレがモヤモヤとスッキリしない正体である。そのような状態を心理学では認知的不協和と言う。
(※「認知」;人は客観的な環境を観るのではなく、環境を主観的に観て、心の中でイメージを生み出す。つまり、様々な出来事・事象を自分なりに解釈している。これを「認知」という)
認知的不協和理論はフェスティンガーによって提唱され、一大旋風を巻き起こし、以降、他の研究者によって私達が生活の中で様々に体験する事例を同理論で検証していくことになる。
「認知的不協和理論」
(1)個人の心の中で、矛盾する2つの認知があると、認知的不協和が起こる。⇒(2)認知的不協和が不快感を起こさせる。⇒(3)不快感を解消するために、人はこの不協和を解消または低減しようとする動機を持つ。⇒(4)2つの認知のどちらか一方を変え、他の一方との間で生じている不協和を出来るだけ小さくしようとする。
以上が同理論のエッセンスである。
前回からコラムでご紹介している『社会心理学ショートショート-実験でとく心の謎;岡本浩一著』の本日は第2章「認知的不協和理論」についてです。
冒頭の知人の話に戻るが、彼は自分の買ったパソコンの方が軽くて持ち運びに便利だから、やはりこれで良かったと、不協和を解消したそうであるが、実際の重さは10〜15g程度の違いだったそうである(笑)。
【認知的不協和理論】
(1)入会儀式の秘密;様々団体やクラブに入会する際、入会儀礼のある場合がある。その入会儀礼は新入会員にとってどのような意味を持っているかをアロンソンとミルズは認知的不協和理論に基づいて予測し、検証をした。実験の詳細については同著をお読み頂きたいのですが、結論は入会儀礼が辛く厳しいほど、会に対する魅力を強く感じるという結果になった。「厳しい入会儀礼条件」で目立って好意的になっており、「統制条件」と「中程度の入会儀礼条件」の間には殆ど差がないという結果であった。以降、入会儀式と会に対する態度の関係の説明原理が、同理論に限られたどうかについても議論があったが、今日では、確立した知見として、この研究は広く受け入れられている。
(2)禁じられたおもちゃのパラダイム;子供にある行為をさせたくないとき、多くの大人は、強い罰や脅し文句を用いる場合がある。その場合、子供は大人の前では確かに言うことをきく。しかし、それは、子供の行動や考えを心底から変える結果になるだろうか。アロンソンとカールスミスは、認知的不協和理論に基づいて、強い罰や脅しによる禁止は、その「いいつけ」の内面化を妨げることになるという主張をし、実験によって立証したのである。(※「内面化」;内在化ともいう。心ないしパーソナリティーの内部に,種々の習慣や考え,他人や社会の規準,価値などを取入れて自己のものとすること。十分に内面化されたものは,もはやほかから受入れたものとして感じられなくなる)。従来の強化論的な心理学では、賞罰の強さ(誘因価)は大きければ大きいほど、行動を規定する力が強いとされていた。しかし、行動の内面化という面からみると、その関係は逆になり得ることを示したものとして、この研究はよく知られている。
(3)報酬の見えざるパラドックス;人が意にそわない行動や発言に対して報酬を受けた時、報酬が多いほどその行為は強く内面化されるかどうか。認知的不協和理論による答えは「ノー」である。その実証を初めてしたのが、フィスティンガーとカールスミスの研究である。意にそわない作業を実験でさせられた被験者は、報酬の少ない方が認知的不協和を心の中で合理化出来ず、「作業は面白かったですよ」と自分についた嘘を自分で信じることで不協和の低減を図ったのである。この研究は、報酬と言動の内面化の逆説的な関係をはじめて科学的に検証した研究として、「禁じられたおもちゃのパラダイム」と並んで有名である。
(4)フット・イン・ザ・ドア・テクニック;これはセールスマンの隠語で、訪問した家で、セールスマンがドアに足を差し入れて「話だけでも聞いてください」とやる行為のことであるが、フリードマンとフレーザーはこのような現象をヒントに認知的不協和理論に基づく説得法を理論化した。結論は、最終的に承諾させたい要請よりも大きな要請をして、わざわざ一度拒絶させ、その後本来の要請をする方法である。相手は最初の要請を断った罪悪感のために、相対的に小さな要請に応じやすくなるのである。他にはロー・ボール・テクニックというものもある。これは、3万円値引きすると言って、契約を成立させた後で、値引き出来なくなったと巧みにいい訳し、元の価格に戻し、それでも良ければ、と言うと、多くの客は結局正価で買ってしまうというものである。一度承諾させた承諾内容の報酬を下げたり、コストを上げたりして、もう一度要請するという方法で、一度手の届く低いところにボールを投げておいて、次に高いところにボールを投げるのに似ているので、この名がある。